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トピック
仁義の墓場 野歩the犬 (2014年01月05日 03時38分)評価


 群れをはぐれた、野良犬一匹…

     どうせ、裏道、見限るからは

            仁義無用で書いてみる・・・


 隠居爺の暇つぶしです。
 ネタ枯れしたら、落とします。

 読み捨て御免でお願いします。

※P-woldの利用規約は遵守ください。

■ 144件の投稿があります。
【15】  14  13  12  11  10  9  8  7  6  5  4  3  2  1  >
【144】

RE:仁義の墓場  評価

野歩the犬 (2014年05月15日 13時11分)

■諸般の事情により、いったん閉鎖することにいたしました。

続編につきましては、近々
   
 地方トピの「広島県」に移設する予定です。


 これまでご愛読いただいた方々に

  改めて御礼申し上げます。

 野歩the犬
【143】

凶犬たちの挽歌  評価

野歩the犬 (2014年05月12日 17時32分)

【復讐の絵図】

七月十六日。

京都府警捜査本部はひき続き、首領(ドン)狙撃の舞台となった「ベラミ」の関係者から事件前後の聞き込みを進めていたが、
田岡一雄に異常な関心を寄せていたホステスの存在を聞きだした。

二十九歳のホステスで
前年の十月に「ベラミ」に採用され、
以前は大阪で勤めていた。
鳴海清が「ベラミ」に姿を見せはじめた時期と一致する。

このホステスは田岡一雄組長が現れると、
興奮した口調で
「どの人が田岡さん?」と、
伸び上がって見つめ、教えてもらうと

「あのステッキを持っている人が田岡さんね」

と、ほかのホステスにも念を押していたというのである。

そして、この女の身元を丹念に洗っていくと、
彼女が大日本正義団・吉田芳幸会長の愛人であることが判明した。

彼女は「ベラミ」から南へ七百メートルのマンションに住んでいたが
二十二歳の同じ「ベラミ」のホステスを同居させていた。

念のため、この女も調べるとやはり、
大日本正義団幹部の女とわかった。

つまり、大日本正義団は田岡一雄がひいきにしている「ベラミ」にひそかに二人の女を送り込み、
行動をじっくり観察させ、逐一報告させていたことになる。

この女たちの情報によって
田岡一雄組長の行動パターンが把握されると、
逐次、女たちは姿を消し、
そののち本格的に鳴海清が常連客として「ベラミ」
に通うようになる。

「ベラミ」の経理を洗いあげてゆくと、
鳴海清はその年の四月二十二日から
七月十日までの間に三十九回も客として訪れ、
ホステスのチップを含めて
百四万七千円を使っている。

ほぼ、一日おきに三万円近くを落していく上客。

しかも、ホステスの一部では彼がヤクザであることは感づかれている。

逆な見方をすれば、
これが山口組の情報網にひっかからなかったのが
不思議なぐらいである。

そこには「まさか、首領(ドン)を直に狙うヤツなどいない」という
山口組側の慢心と油断があったに違いない。

いずれにしろ、この密偵としてのホステスの存在や
鳴海清の「ベラミ」での散財ぶりから、
田岡一雄狙撃は大日本正義団の
組織ぐるみの犯行と断定されることになる。

前会長、吉田芳弘の遺骨をしゃぶった男たち、
執念の復讐劇の「絵図」が次第にあぶりだされていた。
【142】

凶犬たちの挽歌  評価

野歩the犬 (2014年05月12日 17時28分)

【先制摘発】

山口組三代目・田岡一雄が神戸の自宅に戻ったタイミングを逃さず
翌、七月十五日朝、警察庁は一都二府、二十二県の警察に
暴力団の一斉摘発を指示した。

兵庫県警は田岡一雄組長宅、
若頭・山本健一の山健組事務所など五十四ヶ所、
京都府警は大阪府警の協力を得て、松田組組長、樫忠義の自宅、
大日本正義団の事務所、鳴海清の自宅など七ヶ所を捜索した。

「田岡御殿」と呼ばれる灘区篠原本町の田岡一雄組長宅には
組員三十人が泊まりこんでおり
「銃刀法違反容疑」での捜索令状を手にした捜査員が
邸内をくまなく捜索したが凶器の押収はなかった。

田岡一雄は二階北側の十二畳の部屋にふとんを敷いて寝ていた。

収穫のない捜索にあって、
山健組傘下の健竜会事務所の壁に
「団結、報復、沈黙」との会則が貼られているのが不気味であった。

京都府警が捜索した大阪市西成区天下茶屋の
大日本正義団事務所はシャッターが下ろされ
中には電話番の組員三人がいるだけで、
ここからも何もでてこなかった。

山口組の標的目標とされている吉田芳幸会長以下幹部、
十数人は風を食らって逃亡し、所在はつかめない。

鳴海清の自宅からは本人の数次旅券が発見され
海外逃亡説は一応、消えた。

その夜、大阪府警マル暴に情報あり。

「山口組は幹部会で直系の百団体からそれぞれ十人編成の戦闘団を組織するように命じ、すでに三班が行動を開始した」 ――――

大阪府警はライフル銃隊に、警戒待機を命じ
山口組戦闘団を確認次第、凶器準備集合罪で急襲する方針を決定した。

兵庫県警は警備先の警察官には防弾チョッキを着用させ
拳銃使用許可を通達した。

松田組は報復に燃える山口組に包囲されている、
といえたが組事務所前には装甲車、ガス銃、盾をもった
機動隊が厳重な警備体制を敷いている。


炎天下に、風のない暑い夜に、
捜査陣と山口組探索班による
「鳴海探し」のデッドヒートが続いていた。
【141】

凶犬たちの挽歌  評価

野歩the犬 (2014年05月12日 17時35分)

【臨戦態勢】
 

 首領(ドン) 狙撃犯が割れたことによって
戦争の扉はまさに開かれんとしていた。

山口組三代目・田岡一雄組長が入院している
関西労災病院、
山口組襲撃班に狙われるおそれのある松田組組長、樫忠義の自宅や事務所、
大日本正義団事務所、菅谷組関係先などに
兵庫県警、大阪府警の機動隊、装甲車、パトカーが
二十四時間の警戒態勢で臨んだ。

十四日になって、兵庫県警は
田岡一雄組長が入院している関西労災病院には
一般の入院患者、通院患者がいて、人の出入りが多く
チェックが困難なうえ、
もし、再度の襲撃事件が発生すれば
一般市民に巻き添え被害が発生しかねない、
との見方から田岡一雄組長に退院を勧告した。

事実、関西労災病院には
「おまえらは暴力団の親玉をかくまう気か」
「いつまでも山口組の病院をやるんならダイナマイトをぶちこんだる」
という、いやがらせや抗議の電話が殺到していた。

病院側では協議して、田岡一雄の負傷後の経過が安定しているとみて
文子夫人ら付き添いの幹部と相談
「一般の人に迷惑をかけたくない」と田岡一雄は即座に同意した。

午後七時
兵庫県警は関西労災病院周辺の警備を強化、正面周辺道路に盾を持った
機動隊百人を配備した。

午後九時十五分
一般の見舞い客が帰ったあと、田岡一雄組長は五階の特別病室から
ストレッチャーに乗って玄関口へ降りてきた。

薄い水色のガウンを着てタオルケットに包まれ
額にはタオルが当ててあった。

両脇を屈強な組員に支えられて六十五歳の田岡一雄組長は玄関前の黒いキャディラックに乗り込んだ。

主治医の中山英男外科部長、文子夫人、大平組組長、松浦一男が従った。

このキャディラックの前後を山口組の大型外車二台、
さらにその前後をパトカー二台がはさみ、関西労災病院を出発した。

午後十時五分
キャディラックは神戸市灘区の田岡一雄邸に到着した。
ここでも防弾チョッキ、盾、ガス銃を持った機動隊三十人が警戒し
組員五十人が玄関前に出迎えた。

病院の玄関同様、テレビライトが照らし出し、カメラのストロボが光った。

「おんどりゃ、どかんかい!」

「親分のからだに悪い、ひかりを消さんか!」

組員たちは押しかけた報道陣に罵声を浴びせた。

病院では見送りに出た金子仁一郎院長を記者たちがとりまいていた。

「ケガの状態はよくなっていますね。高血圧は持病なので血圧は不安定です。
 普通では、退院は無理なのですが、こんな状況ですからね。
 今後は主治医が自宅で田岡さんを診察します」

この夜、兵庫県警と大阪府警は集まった情報を精査した。
これを総合すると以下のようになる。

■山口組は狙撃犯の鳴海清を警察に先がけて捕らえ「処刑」する方針

■鳴海清以外の山口組の報復目標は以下の三人

 松田組組長         樫忠義(四十歳)
  松田組系村田組組長  村田岩三(五十一歳)
  大日本正義団会長  吉田芳幸(三十五歳)=射殺された吉田芳弘の実弟

兵庫県警は抗争事件発生時には拳銃使用を認める決定を下した。

「マークすべきは細田組組長・細田利明、それに直参の若衆」
羽根組組長、羽根恒夫!」

二人とも「ベラミ」で田岡一雄のお供をしていながら、首領(ドンを)狙われた責任者であった。
【140】

凶犬たちの挽歌  評価

野歩the犬 (2014年05月12日 17時04分)

【首領(ドン)を撃った男】

鳴海清。

昭和二十七年八月十五日、
東大阪市足代の青果商の二男、五女
七人兄妹の末っ子として生まれた。

東大阪市から西成の愛隣地区に移って萩之茶屋小学校、今宮中学へと進む。

「クラス一の弱虫だった」と
小学校時代の同級生の談話を
大阪読売新聞は報じている。

中学卒業と同時に東大阪市内の印刷工場に就職したが、二年で辞めている。
このころから、急速に不良じみてきて、
西成でぶらぶらし始めた。

「体つきはよくいえばスラリとしているが、まあ、きゃしゃ、やね。
 それでも女を連れると肩を揺すって、でかい顔して歩いとったよ」

十七歳になる一ヶ月前に自動車窃盗で西成署に補導され、保護観察処分。

その三ヵ月後に、西成区の喫茶店で客と口論し殴打、
打ちどころが悪かったのか相手を死亡させた。
この事件で一年半、浪速少年院に送られる。

「内向的ながら、逆上するとみさかいのつかない攻撃的な行動にでる」
と、当時の性格診断書にある。

甘いマスクで女にもてる優越感と
内面のひ弱な劣等感が複合した
コンプレックスを抱えていた、とみる向きもある。

大日本正義団が結成されたのは昭和四十六年だから
鳴海清、十九歳のときである。

鳴海は少年院を出ると大日本正義団の使い走りや、
その斡旋でスナックのバーテンをするようになる。

二十二歳で一つ年下の女性と結婚、
同時に吉田芳弘会長から正式に盃をうけ
大日本正義団組員となった。

吉田芳弘会長が射殺される一ヶ月前の
昭和五十一年九月五日
鳴海は自転車で西成区内を通行中、タクシーと接触、
逆上してタクシー運転手を殴ったうえ、
かけつけた西成署員にも乱暴して逮捕された。

十二月、大阪地裁で暴行傷害、公務執行妨害の罪で
懲役一年六月、執行猶予三年の判決を受ける。

このとき、取調べにあたった西成署の暴力係捜査員が
供述調書をとる際
「おまえ、なんでまた、ヤクザなんかになったんや」
と、大日本正義団に入った動機を聞くと、
鳴海は胸を反らしていった。

「そりゃ、パリッとした背広着て、
肩で風切って歩けるさかいや」
【139】

凶犬たちの挽歌  評価

野歩the犬 (2014年05月10日 17時48分)

【狙撃手、割れる】

田岡一雄狙撃の現場「ベラミ」では
京都府警捜査四課の捜査員が
目撃者の話から犯人像を組み立てていた。

犯人は身長170センチ、中肉、面長で白シャツ、
紺のヤッケに白いスラックス。

前年の十月から「ベラミ」に姿を見せ、
その年四月の終わりごろから
足しげく通っていた男だった。

好奇心を顔いっぱい露わにしたホステスたちは
知っていることなら何でも洗いざらいに喋った。

キムラと名乗り、男前だった。

「どんな、お仕事?と聞くと『うるさい!身元調べみたいなことを聞くな』
と、言わはったんえ。
顔に似合わずこわい感じで、とっつきが悪う、おわした」

「髪は?」

「五分刈りどす。左手の小指があらしまへんどした」

「ヤクザだね」

「あの人なら肩から背中に天女の刺青があったわ」

つい、口を滑らせたホステスがいた。

「情婦です」と白状したようなもんである。

捜査員が執拗に尋問すると、
この女はベソをかきながら、
幾度かキムラに誘われて寝たことを白状した。

犯人割り出しの決め手となったのは
グラスに残っていた指紋と
「ベラミ」近くの路上に落ちていた
ヤッケのポケットにあった
壊れたサングラスの指紋からであった。

京都府警から送られてきた指紋は
大阪府警の指紋カードと照合された。

七月十三日、照会指紋が照合した。

指紋番号57877(左)  98898(右)

それは大日本正義団組員、鳴海清の指紋だった。

カードには「性格は粗暴で短気」とあった。

マスコミにかぎつけられる前に鳴海清をつかまえたい、
と大阪府警捜査四課の刑事たちは
大阪市西成区萩之茶屋の鳴海の自宅をはじめ、
めぼしい立ち回り先に踏み込んだが、
その姿は発見できなかった。

この異変を記者たちが感づかないわけがなかった。

七月十四日

京都府警の捜査本部は
山口組三代目・田岡一雄狙撃犯人は
鳴海清と断定し、発表した。
【138】

凶犬たちの挽歌  評価

野歩the犬 (2014年05月12日 17時05分)

【6万分の1の奇跡】

午後十一時
兵庫県警機動隊六百人が神戸市生田区の
山口組本部事務所、
灘区篠原本町の田岡一雄宅など十三ヶ所の非常配備についた。

山口組若頭・山本健一は肝硬変で入院中の
豊中市内の病院からパジャマ姿のまま、
あたふたと関西労災病院にやってきた。

このころから、組員多数がつめかけ、
病院前は報道陣とでごったがえした。

兵庫県警、大阪府警、京都府警のパトカー、
計二十台の赤色回転灯で
病院の白壁が夜目にも赤く彩られた。

田岡一雄組長は搬送されるや、待ち受けていた
中山英男外科部長の執刀で四十分にわたる
手術と手当てをうけた。

弾丸は田岡一雄の首の後部右下から
左上にかけての貫通銃創であったと、
中山外科部長は発表した。

弾丸の射入孔は一・五センチ、
射出孔は一・三センチである。

全治二、三週間である、という発表だった。

「頸を撃ち抜かれて、そんなに軽いのですか?」

当然のように記者団から疑問の声があがった。

「ええ、幸い頸部の筋肉部分だったからです。もう、1センチでも弾道が
 内側にずれていたら大動脈や神経系統をやられて即死だったと思われます」

この説明に記者団から「うおっ」と
感嘆ともため息ともつかぬ声があがった。

後にこの銃弾コースは撃たれた銃弾の口径、距離、角度からして
法医学上「6万分の1の奇跡」であったことが判明する。

「強運も強運。こんな運の強い男は見たことがない」
と、兵庫県警の捜査幹部は漏らしたが、
これは偽りのない感想であろう。

翌日の社会面に「不死身の三代目」の見出しをとった新聞もあった。

手術を終えた田岡一雄は駆けつけた組幹部たちに
「こんなに見舞いにきてくれたら、わしのほうが気をつかう」
と軽口を叩くぐらいに元気で、文子夫人、
長男の満氏に付き添われ五〇六号室に入った。

いっぽう「ベラミ」で流れ弾に当たった二人の医師は
救急車で自分たちの「安井病院」に搬送され、手術をうけた。

安井浩副院長の右肩からは比較的楽に弾丸が摘出され、
三週間の軽傷であった。

津島信則神経科医長は出血がひどく
五時間に及ぶ大手術のすえ、弾丸は摘出され、
二ヶ月の重傷ですんだことに関係者は安堵した。

手術の終わりと同時に夜は明けた。
【137】

凶犬たちの挽歌  評価

野歩the犬 (2014年05月09日 20時14分)

【激 震】

騒然とする店内の人垣をかき分け、
細田利夫と羽根恒夫は首領(ドン)のところに舞い戻ってきた。

「大丈夫ですかっ!」

「うん、心配はいらん」

なんという気丈さか、と細田利明は感じいった。

救急車は到着した。

しかし、細田はとっさに京都の病院へ行くよりは
田岡一雄が心筋梗塞で治療を受けている関西労災病院に
入ってもらったほうが身辺警護上、安全だと判断した。

三代目専用のキャディラックは「ベラミ」の前に駐車してあった。

「尼崎の労災病院に行きます」

「そうしよう」

田岡一雄は負傷した頸をハンカチで押さえたまま、
羽根恒夫に支えられていたが自力で歩いて、
キャディラックの後部座席に乗り込んだ。

午後九時三十分
黒のキャディラックは猛然とスタートし、
夜の京都の町を名神高速道路京都南インターチェンジに向かった。

午後九時四十分
新聞記者たちが「ベラミ」につめかけてきた。

「撃たれたお医者さんの安井病院といえばトラさん(蜷川虎三・前京都府知事)の主治医の病院じゃないか」

そのうち「べラミ」のホステスの中に、
山口組三代目の顔をよく知っている女がいて、
田岡一雄組長が負傷した事実を伝えた。

「なにっ!首領(ドン)が撃たれた!」

記者たちは店内の電話にとびついた。

午後十時十分

兵庫県警暴力対策一課(情報) 同二課(山口組専従)
の電話がいっせいに鳴り始めた。

「田岡一雄組長が撃たれたってほんとうですか?」

「えっ、どこで」

「京都のクラブ・ベラミで、ですよ」

「いつ?」

「つい、さっき」

「ちょっと待ってくれよ」

暴力対策二課はたちまち大騒ぎとなった。

「ほんとうか?」

「早く京都府警に問い合わせろ!」

兵庫県警は京都府警を呼び出した。
だが、要領を得ない。

「ベラミ」で発砲事件があったことは事実らしい。


「田岡一雄が撃たれたとなると、尼崎の労災病院にはいる可能性が高いな」

「時間的に考えて、田岡のクルマがまだ名神高速道路を走っているかもしれん
パトカーを尼崎インターにはりつけて、キャディラックがこないか
監視させろ。別に関西労災病院にもパトカーをやれ」

指令がだされた。

記者たちが暴対一、二課に殺到してきた。

「いったい、どうなってるんですか!」

「ちよっと待ってくれ!こっちも確認の最中だから」

捜査員らはいらいらした。

午後十時三十分、尼崎インターに張り付いていた兵庫県警のパトカーが
黒いキャディラックを発見した。

「どうしたんか」

「親分が撃たれた。早く病院にいかな、ならんのや」

「よし」

いかなる事情があるにせよ、
ことは人命にかかわっている。

兵庫県警パトカーは赤色回転灯を点滅させ、
サイレンを鳴らしてキャディラックを関西労災病院へと誘導した。

午後十時四十分、キャディラックは病院の救急搬送口へ滑り込んだ。

「田岡一雄が撃たれたのは事実らしいな」

パトカーからの無線を傍受していた
暴対一、二課の連中は事件の大きさに緊張した。

捜査員の一斉非常呼集がかけられた。

午後十時四十六分
京都府警本部から正式に兵庫県警本部に
「広域暴力団山口組三代目、田岡一雄組長撃たれる」の報が伝えられた。

兵庫県警本部は直ちに県下各署に
「A1号配備」を命じた。

暴力団抗争にともなう「最大警備体制」である。
【136】

凶犬たちの挽歌  評価

野歩the犬 (2014年05月10日 15時59分)

【京都 ナイトクラブ・ベラミ】

昭和五十三年七月十一日

あの吉田芳弘射殺から一年十か月が経っていた。

京都は前線の通過で夕刻から激しい雨であった。

不気味な稲妻とともに雷鳴が轟き、
京都タワーや二条城が
青白い閃光を浴びて夜空に浮かび上がった。

京阪三条駅前のナイトクラブ「べラミ」は
夏枯れと悪天候で客入りは四分どころ、であった。

午後九時二十五分
雨があがったころ、この夜のショーであった「ルークール」によるリンボーダンスが終わり、拍手が起こった。

ステージの下手寄り、二列目のテーブルに山口組三代目・田岡一雄組長がいた。
この日、太秦の京都撮影所に招かれた田岡一雄は
側近を引き連れ、「ベラミ」を訪れていた。

彼は心臓疾患を抱えていたから
アルコールは口にせず、オレンジジュースで
リンボーダンスのショーを楽しんでいた。

奥のテーブルにいた若い男がこのとき、
いきなり立ちあがった。

男は一歩踏み出すようにすると
コルト38口径の拳銃を抜き
両手で構えると腰を落とし、田岡一雄めがけて、
二発の銃弾を発射した。

「うっ」

思わず、田岡一雄は頸を押さえた。

田岡一雄の右奥に座っていた京都市左京区「安井病院」の安井浩副院長は右肩に銃弾が当たり、
もう一発は同席していた津島信則神経科医長の右背中から腹部に達する銃創を与えた。

二人の医師が倒れたのを見て、一人のホステスは驚きのあまり失神した。

安井浩副院長らは新任の医師歓迎会の二次会として
「ベラミ」に居合わせていたのである。

撃った男は拳銃を握ったまま
「どけ、どけ!」とわめいて入り口から逃げた。

このとき護衛の一人、羽根恒夫はそろそろ引き揚げる時間だと、フロントで清算を頼み、
田岡一雄組長宅への連絡のため、
受話器を握っている最中だった。

羽根恒夫は異変に気づいて
首領(ドン)のテーブルに駈け戻った。

首領(ドン)を撃った男とすれ違いになったのはまさに皮肉なことであった。

田岡一雄のお供をしていたのは若頭補佐・細田利明、
仲田組組長仲田喜志登弘田組組長弘田武志、
それに羽根恒夫の四人だった。

三代目、首領(ドン)が撃たれた!

「追え、追えっ!」

血相を変えた細田利明と羽根恒夫は男を追ったが、
狙撃犯の姿は闇の中へ消えていた。

頸を撃たれながら田岡一雄はしっかりしていた。

自らハンカチで出血を抑えて、
青くなって飛んで来た「ベラミ」のママ、山本千代子に
「わしは大丈夫や。隣の撃たれた人をはよう、病院に運んであげにゃ」
と、落ち着いて指示した。

「べラミ」の中は騒然としている。

「救急車を呼べ!」

「早くあかりをつけろ!」

客たちの怒鳴る声が交錯した。

フロントの男が舌をもつれさせながら110番の受令者にむかって叫んだ

「こちらは三条の『ベラミ』ですが、いま、人が撃たれました!
救急車をお願いします!」

「ベラミ」と道を隔てた真向かいに松原署三条大橋東派出所がある。
客待ちをしていたタクシーの運転手が事件に気づいて派出所に駆け込んできた。

「あの店の中で」

息せき切って立番中の森田寛巡査に叫んだ。

「発砲騒ぎがあったらしいおすえ!」

「えっ!」

森田巡査は本署に急報すると警棒を握り締めて「ベラミ」へ走った。

救急車とパトカーのサイレンが早くも周辺にこだましていた。
【135】

★☆〜ブレイクタイム〜☆★  評価

野歩the犬 (2014年05月09日 17時05分)


やはり、失敗した・・・
誰か一人に絞らんとおもしろくないね〜
群像劇にしようとやたら膨らませすぎた。



■れおさん

おてまえ、恐縮です♪


■パッチン編集長

なんせ、女が絡んでないから
官能シーンはないんだなぁ、これが・・・(つд`) 


■こっぱんだぁぁああ!

プレミアム焙じ茶の差し入れはありがたいが…墓石は盗むな!
【15】  14  13  12  11  10  9  8  7  6  5  4  3  2  1  >
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