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【246】

★13年後のク●ヨンしんちゃん(7)★

たいちょ。 (2007年02月23日 17時46分)
【最終話】



59 :たいちょ。◆4L3QSiOSaI:2006/04/07(金) 02:05:47.18 ID:60VRmiQN0


「シロ。」

名前をよばれて、僕は顔を上げる。しんちゃんが、笑っていた。
まだまだナミダでいっぱいの顔で、それでも笑っていた。

「シロ、くすぐったいぞ。
 そんなにオラの涙ばっか舐めてたら、しょっぱい綿飴になるぞ。
 しょっぱいシロなんて、美味しそうじゃないから。
 だからシロ、オラ、待ってるから。
 今度はオラが待ってるから。」

しんちゃん。

「だから、もう一度、美味しそうな綿飴になって。
 そんでもって、戻ってくるんだぞ。」


だいすき。




61 :たいちょ。◆4L3QSiOSaI:2006/04/07(金) 02:06:26.84 ID:60VRmiQN0

ぼくはしんちゃんに抱きしめられながら、さいごの夢を見る。
もういちど、わたあめになる夢を。
もういちど、おさとうになって、とかされて。
くるくるまわって、あまい、あまいわたあめになる。

目ざめたときに、だれよりも、
君がおいしそうだって言ってくれるわたあめになるために。

ふわふわのわたあめ。
さくらいろの、あったかなわたあめ。
君が大好きだっていうキモチをこめた、
君だけのわたあめ。




62 :たいちょ。◆4L3QSiOSaI:2006/04/07(金) 02:06:58.49 ID:60VRmiQN0

僕はシロ、しんちゃんのしんゆう。十三年前に拾われた、一匹の犬。
まっ白な僕は、ふわふわのわたあめみたいだと言われて。
おいしそうだから、抱きしめられた。

僕はシロ、しんちゃんのしんゆう。
今度はさくらいろの、ふわふわのわたあめになって。
君に、会いに行くよ。



  〜おしまい〜

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【247】

★13年後のク●ヨンしんちゃん(6)★  評価

たいちょ。 (2007年02月23日 17時51分)

48 :たいちょ。◆4L3QSiOSaI:2006/04/07(金) 02:02:11.66 ID:60VRmiQN0

かしゃん、という、なにかがたおれる音がして、僕は目を開けた。
電灯がぽつりぽつりとついた、暗い道の真ん中で、見なれた自転車が横になっている。

のろのろと首を上げると、しんちゃんの前髪が顔に当たった。
道のはじっこのカベに、もたれかかるようにしてしゃがみ込むしんちゃん。
その体はひっきりなしにふるえていて、とても寒そうだった。

僕を抱きしめたまま、動こうとしないしんちゃん。
しんちゃんに抱きしめられたまま、動くことができない僕。

ああだれか僕の代わりに、しんちゃんを抱きしめてあげて。




49 :たいちょ。◆4L3QSiOSaI:2006/04/07(金) 02:02:35.86 ID:60VRmiQN0

「ごめんな、ごめんなシロ。オラ、何にも出来なかった。」

ぽつりぽつりと、しんちゃんが話しかけてくれる。

「いっぱい病院回ったんだ、でも、どこも空いて無くて。
 空いてるトコもあったんだけど、大抵シロを一目見ただけで…何も。
 あいつらきっとおばかなんだぞ。おばかだから、何にも出来ないんだぞ。」

しんちゃん、泣いてるの? ねえ、泣かないで。

「でも、ホントにおばかなのは……オラだ。」

しんちゃんなかないで。

「オラっ……シロがこんなになってるの、気付かなくて…!!
 ずっと、一緒にいたのに…親友だって……思ってたのに、なのに!!!」

なかないで、もういいから。

「シロっ…………。」





50 :たいちょ。◆4L3QSiOSaI:2006/04/07(金) 02:03:01.37 ID:60VRmiQN0


しんちゃんが泣いている。僕はなにもできない。
せめて元気なところを見せようと思って、僕はしんちゃんのほっぺたをなめた。
しんちゃんのほっぺたは、少しだけ早い春の味。




51 :たいちょ。◆4L3QSiOSaI:2006/04/07(金) 02:03:28.44 ID:60VRmiQN0

僕がメスだったら、しんちゃんのために子供を作っただろう。
僕が居なくなっても、寂しくないように。

僕がわたあめだったら、しんちゃんのためにせいいっぱい甘くなっただろう。
僕が食べられても、甘さが少しでも長く口にのこるように。

僕が人間の手を持っていたら、しんちゃんを抱きしめただろう。
僕がしんちゃんにもらった、温もりを返すために。

僕が人間の言葉をしゃべれたら。

きっと、いっぱいいっぱいのありがとうとだいすきを、君に。




52 :たいちょ。◆4L3QSiOSaI:2006/04/07(金) 02:03:57.22 ID:60VRmiQN0

ひっきりなしにこぼれるナミダをなめながら、僕はあることに気が付いた。
僕はここを、今しんちゃんがすわりこんでいるここを、知っている。
ここは、僕と君が初めて会ったところ。
僕と君との、始まりの場所。





54 :たいちょ。◆4L3QSiOSaI:2006/04/07(金) 02:04:19.48 ID:60VRmiQN0

僕は待っていた。
あきらめながらも、いつか。
いつか、おっこちたわたあめでも。
おいしいそうだって言ってくれる人が。

ひろいあげて、ぱんぱんってして。
まだ食べられるぞって、言ってくれる人が、来てくれるって。


【↓↓いよいよ最終話でつ↓↓】
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