返信元の記事 | |||
【1】 | 社長 1 えすびい (2006年05月18日 22時26分) |
||
『社長 vol.1』 彼の名は『社長』。 本名はとてもじゃないが言えない。 社長と俺は同じゼミの出身だ。 俺が社長を初めて見たのは,入学式だった。 第1印象は,「誰の親だ?」 社長は,入学式の新入生(大学も新入生でいいのか?)の席の辺りで,右手で髪をつまみながら辺りを見渡していた。 俺はてっきり,新入生の親が間違えて学生の席に来てしまったのだと思っていた。 そうではないことを,後に社長自らの言葉で聞く事になる。 まあ,これはどうでもいいことだ。 新入早々,彼はゼミの先輩から『社長』という,ありがたいような,ありがたくないような渾名をもらうことなり,それから俺たち以外の人は社長の本名を忘れていった。 そう,彼は4年間,先輩からも後輩からも,男からも女からも,『社長』以外で呼ばれることはなかった。俺たちを除いて。 彼はデブだ(事実)。 彼は油っぽい(髪の毛がいつもべたついている。入浴直後も。事実)。 彼は胸にいつも,点々とソースやケチャップの汁を付けている(腹が出っ張ってるからどうしても付いてしまう。事実)。 彼は眼鏡を掛けている(事実)。 彼は方形だ(事実)。 彼はロリコンだ(後に知った)。 彼の父親はDQNだ(彼に聞いた)。 彼は東京の足立区出身だ(彼に聞いた)。 彼はある一流大学の付属高校出身だ(しかしその高校は,ぜんぜん有名でない。事実)。 彼は妙に政治に詳しい(話し出したら30分は止まらない。事実)。 彼は1度,クイズ番組に出て,ハワイ旅行をしたことがある(彼によれば)。 要するに秋葉原を歩けば,間違いなくロリコンのオタクである。 こんな愛すべき奴と俺は,12年間付き合うこととなった。 人生は素晴らしい。 |
■ 27件の投稿があります。 |
3 2 1 |
【2】 |
えすびい (2006年05月18日 22時28分) |
||
これは 【1】 に対する返信です。 | |||
『社長 vol.2』 それは,6月だった。妖しい季節だった。 夕闇を心に映す季節だった。 以下に述べる事件は,大学の実験の最中に起きた。 Kが,自分は暗い人間じゃないと突然言い出した。 前々から,俺たちのゼミの中で,Kは『暗い』と言われていた。 それを払拭したかったのだろう。または,張り詰めた空気を緩めたかったのだろう。 Kが突然,「俺,みんなから暗いと言われてるけど,そんなことねえよ」と言い出した。 そして,みんなが黙々とフナのスケッチを描いている中で,「俺はサンシャインKだ」と大きな声で叫んだ。 俺たちは吃驚してKを見た。 そして,実験室は大爆笑に包まれた。 時は夜の11時。午後の1時から実験は始まったのだ。もう既に10時間は越えている。 みんな,単調で苦痛な途轍も無く長い時間を過ごしたことで,妙なハイテンションモードに入っていた。 経験がある方は分かるであろう。 徹夜などをしていると,頭がマヒ状態になり,何を言っても面白く,みんなゲラゲラと大声で笑い転げる時間帯があることを。 この時の俺たちが,そういう状態だった。 そして,♂たちが自分に横文字の渾名を付け始めた。 Nは「それなら俺は,セクシーNだ」と叫び, N2は「俺は,アダルトN2だな」とボソッと言う。 そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 社長は満面の笑みで「それじゃ,私はナイスミドルSということで」とのたまった。 そうなのだ。 彼は気付いていたのだ。自分がみんなから中年に見られているということを。 俺たちは真夜中の実験中にも拘らず,ガラスが割れんばかりに笑った。 Y(女性。今で言うロリ顔で可愛い)は,先輩の差し入れのミスドのコーヒーを吹いた。 O(女性。松田聖子の大ファンで,自分もいつかは芸能界に入ると考えていた。美人)は,ぽつりと言った。「社長,自分のこと分かってるんだ」 それから,ゼミの中で,Sのことを『社長』と呼ぶのに,ためらう者はいなくなった。 そして数百人の他ゼミの者もみんな,社長と呼び,彼を知らない者はいなくなった。 天皇が国の象徴であるが如く,彼は大学の象徴となった。 勿論,大学当局は嫌だったろうけど・・・。 |
|||
この投稿に対する 返信を見る (1件) |
© P-WORLD