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【31】

社長 27

ゑびす4 (2006年09月22日 14時11分)
 『社長 vol.27』

 社長が本気で怒ったのを見たことが一度だけあった。

 社長が下宿から寮に引越しをしたときである。
 社長にいいように使われていたN2は,当たり前のように引越しに使われた。
 その時,俺とNは,Nのアパートでまったりと過ごしていた。
 
 昼頃になって,社長とN2はNのアパートにやってきた。
 「いやあ,N2君のお陰で,引越しが無事に終わりましたよ」
 「N2君は良く働いてくれましたよ」
 よくよく話を聞くと,荷物をリヤカーに運んだのは,殆どN2。
 リヤカーを引っ張ったのもN2。
 荷卸をしたのも殆どN2。
 社長は殆ど何もしなかったようである。

 「じゃ,N2君には引っ越し蕎麦ということで,蕎麦でも食いに行きますか?」
 社長の提案で,我々4人は蕎麦を食いに行った。
 「N2君は,手伝ってもらったのでここは私が奢りますよ。いっひっひっひ」
 「でも一緒に来たんだから,俺達も奢ってもらえるよな」
 と,俺とN。
 「まさか。何もしてくれなかった君達には奢りませんよ」
 ふくれっ面をする社長。
 もともと丸い顔が,さらに丸くなる。
 「まさか,Sのことだから奢るよな」
 と,しつこく食い下がるおれとN。
 「冗談じゃないですよ。奢るのはN2君だけですよ」

 そこでN2が言った。
 「じゃ,俺が3人前頼めばいいんだよな。そして,OとNに食い切れないからと言って,やればいいんだよな」
 そうだそうだと言い張る俺達3人。
 社長は不機嫌になった。
 注文の品が届いて,普通に会話をしながら蕎麦を食った。
 そして,いよいよ支払いのときである。

 「S,ご馳走さん」
 にこやかに社長に話しかける俺達。
 ぶすっとして「何で私がO君やN君に奢らなきゃいけないんですか」
 とぶつぶつ言う社長。
 なんだかんだでその場は社長が全額支払った。

 そして,その時が遂にやってきた。
 店から出たNと俺は社長に「さっきのは,冗談だよ。はい。俺達の分」
 俺とNは,500円札を社長に渡した。
 途端に社長は,札をびりびりと破いて撒き散らした。
 ふくれっ面をしながら。
 その時の社長は丸い顔をした阿修羅であった。

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【32】

社長 28  評価

ゑびす4 (2006年09月22日 14時13分)

 『社長 vol.28』

 社長と我々は飲みに行った時必ずすることがあった。
 それはナンパである。
 おそらくあなたはこう思うに違いない。
 「なんで社長が一緒なのか?」
 社長と一緒だとナンパ成功率が下がるのではないかと思うあなたは,間違っている。
 社長がいてもOKであるということは,もうこちらにぞっこんであるということになる。
 その日も予定通りナンパをしていた。
 この日の場所は,パブではなく買い物公園だった。
 因みに買い物公園とは恒久的に歩行者天国なった旭川の全国初の通りである。

 まずはジャンケンである。
 誰が声を掛けるかのジャンケンである。
 結果は・・・
 一番気の弱いN2になった。
 早速,4,5人のお嬢様のグループを探す。
 ・・・いない・・・
 全然いない・・・
 30分ほど買い物公園を物色しながら歩く。

 時は21:00。
 暗くて顔など良く見えない。
 それでもOKなのである。
 そこまで我々5人は落ちぶれていた。

 いた。
 4人グループがいた。
 早速N2が声を掛ける。
 「あの〜,煙草の火貸してもらえますか?」
 これを皮切りに口説く。
 近くでことの推移を見守る我々。
 玉砕だった。

 しかし,我々はあきらめなかった。
 今度のジャンケンでは社長が声掛け役になった。
 そして,30分後,ようやくターゲット発見。
 「あの〜,ちょっといい?」
 社長が声を掛ける。
 返ってきた言葉が我々の野望を打ち砕いた。
 「あ〜っ,さっきの人!」
 そう,我々は同じグループをナンパしたのだった。
 しかも誰であれ顔を覚えられやすい社長を同行して・・・

 心を粉々に砕かれた我々は,男衆5人で,場末の居酒屋で酒を浴びるほど飲んだ。
 何もかも忘れたかった。
 そして,社長はあいも変わらず飲んでる最中にunkoをしたのはいつもの通りである。
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